地方UIターンでトリマーが増えています。
一極集中から地方創世へ
ここ数年、UI ターンにより地方で働くリージョナルトリマーが増えています。2014 年に、東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけるため、「地方創生」が政府より政策として発表されました。 それにより地方が活性化され、またメディアなどでも、地方で働くメリットを取り上げられることが多くなりました。
なにかと便利な都心から離れ、地方で働くメリットとはなんでしょうか。
現在、岩手県でトリミングサロンを経営され、オーナートリマーとしても働いている、卒業生の志田眞佐江さんにお話を伺ってみました。
天職との出会い
志田さんは東京都出身で、結婚を機に岩手に移住されました。ところが2011 年3 月11日、東日本大震災により岩手の住居が被災し、ご実家とお嬢様がいる東京に単身避難されました。
落ち着くまで東京の市役所に勤めていた志田さんでしたが、震災の経験から、「自分の人生だから、死ぬ前に何かやらなきゃ!」と次第に思うようになりました。
それから簿記の資格を取ったり、ファイナンシャルプランナーの勉強をしたりしましたが、思うように続きませんでした。「飽きっぽい性格なんです。」志田さんは、そうおっしゃいます。
そんな中、お嬢様が飼っている愛犬に、毎月高いトリミング代がかかっていることを知ります。毛玉代だけで3000円もかかっていたそうです。どうにか自分でできないかと考えた志田さんは、ネットで「犬塾」を見つけます。犬塾は、自分の愛犬のトリミングを学べる所で、スクールと同じビルにあります。
ある時、意欲的にトリミングをしていた志田さんに「スクールに通えば、自分のお店が出せるようになるよ」と犬塾の先生が声をかけます。もっと深く学びたいと感じていた志田さんは、スクールのフリータイム制に通うことになりました。
約2年で卒業し、そのあとは都心のサロンで2年半修行をしました。忙しいサロンで、体力的に厳しいと感じることもありましたが、学ぶことも多く、飽きっぽいはずの志田さんは、気づけば4 年半もトリマーという道を進んでいました。
そして岩手も落ち着いたころ、満を持してご自身のサロン「Dog Salon Sweetpea」を開業されました。
地方でのやりがい
東京でサロンを出すことも考えたそうです。東京で成功すれば⼀⼈前とも感じていたし、学べる場も多いのではないかと思っていたからです。しかし、東京は家賃や⽣活費も⾼く、店舗を借りるにしても地⽅より狭く⾼額です。東京はお客様も多いかもしれないですが、のんびりトリミングをしたいと考えていたため、忙しくて疲れてしまうのではという不安もありました。何より岩⼿には旦那様という強⼒な味⽅がいました。
志⽥さんの予想は外れ、「ゆったりしていて対応が丁寧」「飼い主の⾒えるところで対応してくれるから安⼼」という⼝コミが広がり、お客様は着実に増えています。
サロンで学んだ和⽝のシャンプー技術が⽣かされ、柴⽝や秋⽥⽝のお客様も多いそうです。勉強熱心な志田さんは、2~3 ヶ⽉に1回ほど、東京での勉強会に参加されています。また愛犬のルークくんをドッグショーに出してチャンピオンフィニッシュさせ、今はプードルのリーナちゃんやフェリシアちゃんを迎え、ブリーディングにも挑戦中です。
インタビューも終わりに差し掛かった頃、「⽝を通して飼い主様の相談に乗ることが嬉しいです」と志⽥さん。岩⼿ののんびりした丘の上で、にこやかな志⽥さんに話を聞いてもらい、笑顔になって帰る飼い主様とワンちゃんの姿が⽬に浮かびます。
地⽅で働くことは、確かにデメリットもあります。しかし⽣活費の安さ、⾃然環境の良さ、U ターンの場合であれば家族がいる安⼼感など、都⼼とは違った良さがあります。今後、選択肢の⼀つとしてUI ターンも視野に⼊れてみてはいかがでしょうか。