30代からトリマーへ。16年間の保育士経験を経て、新しい夢に挑戦
「犬が好き。いつか動物に関わる仕事もしてみたい」
そんな気持ちを持ちながらも、今とはまったく違う仕事をしていた人が、大人になってからトリマーを目指すことがあります。
今回お話を聞いたのは、ケンネルスクールのフリータイム制でトリミングを学んでいる柴﨑さんです。
実は柴﨑さん、スクールに通う前は16年間、幼稚園や保育園で子どもたちと関わる仕事をしていました。
長く続けてきた保育の仕事から、なぜトリマーという新しい道を選んだのでしょうか。
子どもか、動物に関わる仕事がしたかった

柴﨑さんが子どもの頃から興味を持っていたのは、「子ども」と「動物」に関わる仕事でした。
最初に選んだのは、子どもと関わる道。
憧れていた先生がいたこともあり、短大卒業後は幼稚園に就職。その後、保育園でも働き、保育の仕事を16年間続けました。
「保育の仕事は、十分やったなと思えたんです」
長く続けてきた仕事に一区切りをつけたとき、もうひとつの「好き」が再び大きくなっていきました。
それが、動物でした。
柴﨑さんは昔から犬だけでなく、インコや亀、金魚など、いろいろな生き物と暮らしてきたそうです。
中でも忘れられない存在が、小学5年生の頃から16歳まで一緒に暮らした、男の子のコーギー「プリンくん」。
名前の由来を聞くと、
「お尻がプリンプリンしていたから(笑)」
コーギーらしい、かわいいエピソードです。
愛犬の“ハートのお尻”が、トリマーへの興味につながった

プリンくんをトリミングに連れて行ったときのこと。
トリマーさんが、お尻の毛をかわいいハート型に仕上げてくれたことがあったそうです。
その姿を見た柴﨑さんは、とても嬉しかったといいます。
「こんなふうにかわいくしてもらえるんだ」
20代の頃から少しずつトリマーという仕事に興味を持つようになり、保育の仕事に区切りをつけたことで、
「やっぱり自分もトリマーをやってみたい」
と改めて思うようになりました。
とはいえ、30歳代からまったく新しい仕事を学ぶことになります。
そこで学校選びの条件になったのが、仕事をしながら通えることでした。
働きながら通える学校を探して
トリミングスクールをインターネットで調べてみると、通える時間や曜日が決められている学校も多かったそうです。
その中でケンネルスクールを選んだ理由のひとつが、土日も選択でき、自分の予定に合わせてフリータイムで通えること。
そして、もうひとつ大きかったのが、
「一人で一頭を担当できること」
でした。
実際のわんちゃんを最初から最後まで担当しながら学ぶ。
そこには、想像していた以上の難しさもありました。
同じ「爪切り」でも、犬によって正解が違う

スクールに入って最初に苦戦したのは、爪切り。
その次は体のバリカン、そして最近は後ろ足のカットに難しさを感じているそうです。
特に爪切りでは、技術だけでなく犬を安全に支える「保定」に苦戦しました。
自分がやるとスルッと抜けられてしまったり、立ち上がってしまったりするのに、先生が担当すると大人しくなる。
「なんで先生だとできるんだろう?」
そんな経験を重ねながら、少しずつ気づいたことがありました。
犬によって、嫌なことも、安心できる方法も違う。
以前、爪切りを嫌がるわんちゃんを担当したときのこと。
しっかり保定しようとすると、余計に嫌がってしまいます。
そこで無理に押さえ込まず、その子の様子を見ながらやってみると・・・。
うまく爪を切ることができました。
「その子その子に合ったベストな方法を探すのが難しい。でも、うまくいったときは嬉しいです」
トリマーは、ただ決められた手順通りに作業をする仕事ではありません。
目の前の犬がどんな性格なのか、何が苦手なのか。
それを短い時間の中で判断し、できるだけ負担の少ない方法を考える必要があります。
しかもスクールでは、毎回同じ犬を担当するわけではありません。
だからこそ、一頭一頭の犬を「見る力」も必要になるのだと、柴﨑さんは実感しています。
初めての顔バリカンは、手が震えた
今でこそ少しずつできることが増えてきましたが、初めて経験する作業には怖さもあります。
6月7日、初めて顔にバリカンを入れたとき。
「怖くて、手が震えました」
顔の近くに刃物を当てるのですから、緊張するのも当然です。
爪切りだけで30分以上かかってしまうこともあり、今の目標は一つひとつの作業をもっと手早くできるようになること。
ただ速くするのではありません。
「手早く、犬に負担なくできるようになりたい」
そこには、保育士として長く「相手を見る仕事」をしてきた柴﨑さんらしさも感じます。
「私がきれいにしてあげる!」
そんな柴﨑さんが、今いちばん好きな作業はシャンプー。
特に汚れているわんちゃんを担当すると、やりがいを感じるそうです。
「私がきれいにしてあげる!って思います(笑)」
シャンプーをして、乾かして。
汚れていた毛がきれいになり、ふわふわになっていく。
さらにカットをして、顔がかわいく仕上がった瞬間。
その子が持っている本来のかわいさが見えてくることが嬉しいと話してくれました。
トリミングは、きれいな犬をさらにかわいくするだけではありません。
お手入れを通して、その子が本来持っている魅力を引き出してあげられる。
それも、トリマーという仕事の楽しさのひとつなのかもしれません。
卒業後も学べる場所で、もっと犬と関わりたい
卒業後について尋ねると、
「すぐに一人で働くのは、まだ不安です」
と柴﨑さん。
だからこそ、卒業後も先輩からしっかり教えてもらえるサロンで経験を積みたいと考えています。
希望しているのは、大きなお店よりもこぢんまりとしたアットホームなサロン。
さらにペットホテルが併設されていて、預かっているわんちゃんのお散歩など、トリミング以外でも犬と関われる環境にも興味があるそうです。
現在の生活環境では、自分で犬を飼うことが難しいからこそ、
「いろいろなわんちゃんと、いろいろなことをしたい」
そんな思いがあります。
「やってみたい」を新しい仕事に

自分の性格について、
「意志を曲げない心がある。メンタルが強い」
と話す柴﨑さん。
16年間続けた仕事から離れ、ゼロから新しい技術を学ぶ。
今は一頭一頭の犬と向き合いながら、少しずつできることを増やしています。
トリマーを目指すのに、「この年齢からでは遅いのかな」「未経験だから難しいかな」と迷っている人もいるかもしれません。
でも、スタートする時期も、それまで歩んできた道も人それぞれ。
そして、それまでの仕事で身につけてきた経験が、新しい仕事の中で生きることもあります。
子どもたち一人ひとりと向き合ってきた16年間。
今度はその経験も力に変えながら、一頭一頭のわんちゃんと向き合っていく。
「犬が好き」「トリマーをやってみたい」
ずっと心のどこかにあったその気持ちを、今、新しい夢として形にし始めています。

