ケンネルスクール横浜校を卒業後、逗子海岸にあった先輩卒業生のお店「ドッグサロン オーフル」を受け継ぐ形で2019年に開業したのが、会田いずみさんです。2023年には京急逗子線の神武寺駅からわずか徒歩30秒の場所に移転。２人のスタッフとサロンを運営しています。
「お客さまはすごく良い方ばかり。チャイニーズ・クレストテッド・ドッグ、サモエド、チャウチャウといった珍しい犬種のワンちゃんも多いです。一頭一頭みんなが大事な家族なので、無理なことはしないで、楽しみながらお互いに楽しい時間を過ごせるように心がけています。うちのスタッフも犬を愛する優しい人たちで、今日はいい天気だねとか、暖かくて気持ちいいでしょうとか、みんな犬とお話ししながらトリミングをしています。とにかくみんな可愛いので、今日も一日楽しかったねと言って仕事を終える毎日です」。
犬種が同じでも一頭一頭、みんな顔は違うと言う会田さん。その子のいちばん可愛いところを見つけてあげることを大事にしているとのこと。心からトリマーの仕事を楽しんでいる会田さんの気持ちと、犬への愛情が店内には感じられて、この街の犬たちや飼い主さんにオーフルが支持されている理由がわかる感じがしました。

もともと犬が大好きで、５頭の犬を飼ってきた会田さん。トリマーになる前は手芸用品店で働いていたそうです。自分の家の子たちのトリミングを自分でできるようになれば節約になるなあというくらいの気持ちで、ケンネルスクールの説明会に行ってみたことがトリマーライフの始まりだったそうです。
「開業どころか自分がトリマーになろうとも思っておらず、うちの子のことをやれたらというだけ。でもケンネルスクールで見学をしているうちに、「これを仕事にするっていいかも。やってみたい！」と思ったんです。でも年齢が50代半ばだし無理ですよねと相談したら、先生は大丈夫！と言ってくださいました。それで頑張ってみることにしたんです」。自分がトリマーになる姿を初めて想像したときの、ワクワクする気持ち、それが会田さんを動かしました。手芸用品の販売の仕事をしながら、フリータイム制で週３日通い始めたのです。
「最初は自分の上手くできていないカットが先生に見られるのが恥ずかしかったのを覚えています。でも意欲的な同期たちにも刺激されて、やるからには頑張らなきゃと夢中でした。この年齢になると学ぶ場面は少なくなるけれど、ケンネルスクールではどんどん学んで新しいことにチャレンジして習得できる。それがすごく楽しかったです。技術的なことはぜんぶ教えていただきました。８カ月間だけだったけれどすごく濃い知り合いもできました」。澤地先生がポメラニアンの耳のカットの仕方を図に描いて教えてくれたことは今でもよく思い出し、仕事に役立っているそうです。卒業する頃には、自分のお店を開くことを決めて物件も探し始めていました。

卒業後、ケンネルスクールの先輩卒業生のお店を受け継いで逗子海岸の街でトリマーとして働くことにした会田さん。お店には先輩のときからのお客さまも来られるため、先輩と比べられることがプレッシャーだったとのこと。でも、新米トリマーを育てようという姿勢で任せてくれるお客さまに自分は育ててもらったと会田さんは言います。「今も来てくださっているお客さまが、あの頃の会田さんはまだへただったよねーと笑い話にして話してくださって、一緒に大笑いしたりしています。それでも来てくれていたんだなあと感謝しています」。
最初のお店では一人で働いていた会田さんですが、より広い今の場所に移転したことで、ケンネルスクールの後輩卒業生にアルバイトに来てもらうことに。「以前は自分一人でやることが楽しかったんですが、今は後輩たちと一緒にやって、みんなが成長するのも楽しくなってきました。ものすごくやる気があって、素直で吸収も早い。どんどん上手になっていく姿が嬉しいです。教えることもすごく勉強になります」。以前の販売のお仕事では、休日が終わって明日から仕事だという日は気が重かったそうですが、トリマーになってからはそう思ったことが一度もないとのこと。「60歳を過ぎた歳になっても毎日が勉強という生活になれて、すごくよかったと思います。こんなに好きな仕事が見つかったということが、もう学校に感謝です」。他のお仕事経験で培われたコミュニケーション力も、年齢を重ねている方だからこその温かい人間力も、ぜんぶがお店の強みになることを会田さんに気付かされました。これからも頑張ってください。